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日本独自編纂論文集。
デュルケムと女性、あるいは未完の『自殺論』 アノミー概念の形成と転変
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第3章「アノミー研究におけるマートン」(1978)
II 整合でかつ未完成なタイポロジー
III 捉えがたいアノミー
- 99 アノミーには三つの用法がある
- 100 もっとも普及した手短なバージョンでは、マートンの議論は、
「非行行動は、社会的成功の手段を手に入れることの困難な不利な立場にある社会階層の中で最も生じがちである」
と要約される。しかし、ここには「アノミー」は存在しておらず、しかも不要なのである。
- 101 1955年の「青年非行に関する討論集会」では、社会構造と文化構造の区別を強調しようとしている。
- 文化構造:「特定の社会ないし集団の成員に共通な行動を支配する規範的価値の組織体」
- 社会構造:「社会または集団の成員がさまざまな仕方でかかわりあう社会関係の組織体」
-IV デュルケムのアノミーからマートンのアノミーへ
123
- デュルケームは:可能なものの地平が開かれているのに、自分のなすべきことが分からない諸個人について論じている
- デュルケームの議論は、上方の階級にかかわる
- マートンは:到達すべき目標ははっきりしているが、そのアスピレーションは成功の可能性を閉ざす状況と出会っている行為者を想定している
- マートンの議論は、下方の階級にかかわる
125-126
- デュルケムの謂うアノミーは──目標の到達可能性によってではなく──目標を決定できないことから生じる。
- 欲望が障壁と衝突する状況に対して、デュルケムは「宿命論」という名を与えている。
127-128 結論
このように見てくるなら、アノミーという語の今日の用法が、多くの経験的研究のもとでは、心理的アノミーないし無規範状態(normlessness)と、宿命論にごく近い無力感(powerlessness)との、明らかにその本性の反対なものの結合というものであることが、よく理解できるであろう。さらにまた、この観念の適宜する場合、いつでも支配している混乱状態についても、よく理解できよう。多くの影響を与える犯罪研究の伝統としてのマートン理論は、アノミーをその反対のものと同一視させるこの動向のなかで決定的な段階をなしているその分だけ、この混乱に対しても大きな責任がある。マートンはこの意味内容の大きな逆転にきわめて有力に働いているだけでなく、かれ自身をデュルケムとの関係においてはっきり位置づけを行わなかったゆえに、その逆転を隠蔽し、自らを正当化したのでもある。こうして、ひとつの逆説について結論を下すところに導かれる。すなわち、マートンは社会学文献のなかでアノミーの運命を決定的な仕方で方向転換させるという力業に成功するが、この概念を真に定義することも行わなかったし、かれの議論にとってこの概念がなにゆえに有用であるのかも示さなかったのである。