注64関連 安藤裕介(2014)『商業・専制・世論──フランス啓蒙の「政治経済学」と統治原理の転換』

注64、ル・メルシエ・ド・ラ・リヴィエールに関連して。


創文社

  • 序論 「政治経済学」の言説空間としての穀物取引論争
    • 1 本書の視角──「政治経済学」という問題設定
    • 2 本書と先行研究との関係
    • 3 本書の構成
  • 第一章 「政治経済学」の言説空間としての穀物取引論争
    • 第一節 穀物取引論争の概要
    • 第二節 穀物取引論争の布置
  • 第二章 経済的自由主義専制政治――ケネーの「政治経済学」
    • はじめに
    • 第一節 ポリス批判と「自然な流れ」の擁護
    • 第二節 合理的経済人の理念と新たな秩序観
    • 第三節 経済的自由の享受と後見的権力
    • 小括
  • 第三章 合法的専制の構想と世論の観念──ル・メルシエ・ド・ラ・リヴィエールの「政治経済学」
    • はじめに
    • 第一節 自然的秩序・明証性・合法的専制
    • 第二節 マブリのフィジオクラット批判
    • 第三節 合法的専制における世論の問題
    • 小括
  • 第四章 「一般均衡」の発見と合理的経済主体の不在――チュルゴーとコンドルセの「政治経済学」
  • 第五章 世論と市場に対する為政者の技法と苦悩――ネッケルの「政治経済学」
  • 結論

書評いろいろ

序論

  • 18世紀のフランスではエコノミーという語はいろいろに使われていたよ:国家の統治全般、公共財政、commerce の互換語、など。
  • 本書で扱う論者に対して「政治経済学」という言葉を使うのは、次の世代のセイが、前の世代を一括してそう呼んだからだよ。
  • セイが指摘したのは、前の世代が 統治形態・社会編成・富の問題を切り離さずに論じていた、ということだよ。
  • [6] 本書の目標は、18世紀フランスの政治経済学を、当時の言説状況に即した未分節かつ論争中の学問として浮かび上がらせることだよ。
  • [7] 中でも特に穀物取引の自由化をめぐる論争を取り上げるよ。
  • 本書は特に、ポランニー、ハーシュマン、ロザンヴァロンらの思想史研究から多くの示唆を受けてます
  • [9] ロザンヴァロンはこれ:ピエール・ロザンヴァロン(1989→1990)『ユートピア的資本主義―市場思想から見た近代』国文社

ロザンヴァロンの研究では18世紀フランスにおける「経済イデオロギー」──もともとはルイ・デュモンの使用した言葉…──の出現が検討されている…。この言葉によって彼が表象しているものは、異なった社会的利益を調整し、人々の平和な共存を可能にする理想のモデルとしての市場社会像である。ロザンヴァロンは、ここで「政治的なもの」(=社会契約による権威あるいは権力の樹立)と「経済的なもの」(=自己調整する市場空間)のイメージを鋭く対照させている。ロザンヴァロンは、ここで「政治的なもの」(=社会契約による権威あるいは権力の樹立)と「経済的なもの」(=自己調整する市場空間)のイメージを鋭く対照させている。彼の理論的図式に従えば、17世紀の社会契約論がどのように社会が成立するのかを説明する原理だとすれば、18世紀の市場社会論はどのように社会が調整されるかを説明する原理なのである。だが、この二つの時代、この二つのモデルを鋭く対照させることによって、ロザンヴァロンは「政治的なもの」と「経済的なもの」が絶えず交渉を繰り返す思想・言説空間を取り逃がしている。むしろ本書が力点を置くのは、一方の凋落と他方の勃興というコントラストではなく、両者が連続し、混じり合い、何度も境界線を引き直す過程のダイナミズムである。

参照されてるデュモンの著作は1977の Homo aequalis.

  • [10] 既存の「政治経済学」研究は、〈富/徳〉、〈文明(商業)社会/シビックヒューマニズム〉などを中心としてました。
    本研究が扱うのは自由市場の成立をめぐる政治的なものと経済的なものの葛藤や交渉です。