第7章「概念的幻覚の使用」

7 Working conceptual hallucinations 小見出し

  • 7-1 生体エネルギー論における典型的な説明図
    Some typical pictures from bioenergetics
  • 7-2 科学者の説明図の形式的特性
    Some formal characteristics of scientists' pictures
  • 7-3 説明図と言葉的談話の語彙
    Pictures and vocabularies of verbal discourse
  • 7-4 説明図の文脈依存性と Trubshaw のジレンマ
    The context-dependence of pictures and Trubshaw's dilemma
  • 7-5 鞭毛状モーターと至高存在
    The flagellar motor and the Supreme Being
  • 7-6 視覚的ジョークと実在性の程度
    Visual jokes and degrees of realism

第9章におけるまとめ再掲:

第7章に関するまとめだけが不釣り合いに長い。

  • 【0】 「テキストやインタビュー記事にすでに適用されているのと同種の分析が説明図的談話にも広く適用されることを示した。とくに,科学的知識=要求の説明図的解釈は,解釈文脈の間を移動するのに応じて,規則的に変化することが明らかになった。」
    「このように,談話分析は,いままで閉されていた研究主題の分野を経験的調査を受けうるように開放するだけでなく,このような主題が思いがけなくも社会学の長年の争点に光をあてることをも示すのである。というのは,われわれの分析は,科学者たちの説明図についての検討こそ、知識社会学の中心問題を取り扱う簡潔で効果的な方法──すなわち, 自然世界についての科学者たちの専門技術的表示の文脈的可変性を明らかに論証する方法──を与えることを示したからである。」
  • 【1:図についての科学者たち自身の解釈】 「科学者たちの解釈は,彼らが行為と信念を描くのに使用した経験主義的・偶然的レパートリーとぴつたり並行する説明図的表示の実在主義的・虚構主義的信念に依存していること,をわれわれは見出した。」
  • 【2:教育的図についての談話】 「説明図についての彼らの談話は,性格上圧倒的に虚構主義的であった。しかし,一つのきわだった例外は,われわれのデータでは,学生および一般向けのものといわれる説明図についての彼らの懇談の中にあった。このような説明図はいっそう実在主義的な仕方で構成されねばならない, と彼らは強調した,そして,このような説明図についてのわれわれの検討が示したように,それらは専門家の間に流布しているのとはしばしば別のものであつたし,またそれらは通常の対象の日常的表現の領域から借りられたいっそう「実在主義的な」視覚的構成要素をしばしば含んでいた.」
  • 【3:図におけるレパトワの衝突】 「また,説明図についての懇談において科学者たちが虚構主義的レパートリーと実在主義的レパートリーとを使用し,両者の間を移動することが,行為と信念についての経験主義的談話と偶然的談話との間の転移において現われる問題とよく似た解釈問題をしばしば造り出していることが明らかになった。」
    • 【3':Trubshawのジレンマ】 「これらの解釈問題の中で最も明白なものである「Trubshawのジレンマ」は,説明図についての科学者たちの虚構主義的説明と,学生にはいっそう実在主義的な説明図が適しているという彼らの要求とを統一することの困難から生じたのである.この解釈問題は説明図についての回答者たちの反省的懇談に限られるのではないこと,このジレンマは視覚的領域自体においてしばしば現われること,が示された.」
    • 【4:視覚的ジョーク】 「この主張は,ある種の視覚的ジョーク──そこでは,「まじめに受けとられるべきではない」構成要素が,全く別の談話分野からの説明図的諸資源によって,ユーモラスに表示されている──を検査することによって強力に根拠づけられた.この種の視覚的ジョークが,検討中の知識=要求の構成要素に付与される「実在性の程度」への明晰な指針を与えるように組織されることによって,Trubshawのジレンマを解決するように思われるのである。」
  • 【第8章について:視覚的ジョーク】 「酸化的リン酸化の漫画はわれわれに科学者たちのジョークをまじめに受けとるようにさせた。われわれはジョークを、参加者たちの潜在的な解釈多様性が明らかに暴露される談話形式であると考えた。それゆえ,われわれはそれらを今までの結論へのチェックとして使用した,そして科学者社会の内部で広く流布しているジョークを選出し,それらを使って,われわれの研究成果の少なくとも幾つかは一般に科学者たちの間で自然に行なわれている談話に適合するものであることを示したのである。」
さらなる要約
  • 七章では、①論文などの中で使われている説明図についての科学者へのインタビューと、②教科書や啓蒙書などで使われている図についてのインタビューをおこない、
  • ①においては、ほかの談話でも見られる〈経験主義的レパトワ/偶然的レパトワ〉に相当するような説明の仕分けを 図についてもやっていること、
  • ②においては、論文と教科書では図の役割がちがっていて、教科書の図は実在的に解さなければならない(?)と科学者は考えていることを確認したうえで
  • ほかの談話で〈経験主義的レパトワ/偶然的レパトワ〉のバッティングによって生じるジレンマ/パラドクスに相当するものが、図においても生じることを述べたうえで、
  • それを利用しているのが科学的漫画・戯画であること指摘した。
    • そこから「科学者のジョーク」だけのために章を立てた(第8章)。

各節で扱ったもの

化学浸透圧説に基づいた模式図を中心とする9枚の図にかかわる25のインタビュー。中心となるのは図5-8。

  • [7-0] {章の概要}
  • [7-1] 生体エネルギー論の教科書と雑誌論文に見られる説明図。
    • 図01 (p. 260):教科書掲載の口絵。「動物と植物の細胞膜と細胞機能」
    • 図02 (p. 262):1970年代の雑誌論文。「ミトコンドリア膜におけるプロトン移動呼吸鎖」
    • 図03 (p. 263):「プロトン勾配とエネルギー生成の共役」
    • 図04 (p. 263):「ミトコンドリア膜における科学浸透圧共役」
  • [7-2] {[7-1]の検討:8つの特徴を挙げている}
  • [7-3]
    • 図05 (p. 269):Biochemical Society Transactions誌のレビュー。「ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化」
    • 図06 (p. 269):雑誌レビュー。「生物膜のモデル」
    • 図07 (p. 270):1978年、Scientific American。「ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化」
    • 図08 (p. 271):Scientific American のレビュー。「大腸菌での酸化的リン酸化と鞭毛の回転」
    • インタビュー7A (p. 273) Pugh
    • インタビュー7B (p. 274) Fasham
    • インタビュー7C (p. 276) Smith
    • インタビュー7D (p. 276) Trubshaw
    • インタビュー7E (p. 278) Harding
    • インタビュー7F (p. 278) Hargreaves
    • インタビュー7G (p. 279) Miller
    • インタビュー7H (p. 280) Holloway, Grant, Norton, Burridge, Richardson, Jeffery, Scott, Hilton, Cookson
  • [7-4]
    • インタビュー7J (p. 284) Grant, Harding, Thompson, Barton, Smith, Miller, Waters, Roberts
    • インタビュー7K (p. 287) Grant
    • インタビュー7L (p. 287) Barton
    • インタビュー7M (p. 287) Trubshaw
  • [7-5]
    • インタビュー7N (p. 294) Roberts
    • インタビュー7P (p. 294) Cookson
    • 一般向け記事7Q (p. 298) Hardy
  • [7-6]
    • 図09 (p. 302):教科書掲載。「プロトン転位を伴う呼吸鎖」

参照文献

  • 注8. 視覚的ジョークの他の例:David G. Nicholls, Bioenergetics: An Introduction to the Chemiosmotic Theory, London and New York: Academic Press, 1982.

内容

7-3 説明図と言葉的談話の語彙 Pictures and vocabularies of verbal discourse

談話断片へのコメントが始まる節。引用を除き全部で14段落ある。

  • [01]
  • [02]
  • 図V、図VII、図VIII、図IX
  • [03]
  • [04]
  • [05]
  • 7A、7B
  • [06]
  • [07]
  • 7C、7D
  • [08]
  • [09]
  • 7E、7F
  • [10]
  • 7G
  • [11]
  • 7H
  • [12]