涜書:ワン編『行動主義と現象学』

twitter で教えていただいたもの。
1963年におこなわれたシンポジウムの記録。邦訳は1980年。

行動主義と現象学―現代心理学の対立する基盤

行動主義と現象学―現代心理学の対立する基盤

  • 1. シグマンド・コッチ(Sigmund Koch)「心理学と統一体としての知識の出現」
  • 2. R.B. マクレオード(R.B. MacLeaod)「現象学実験心理学への挑戦」
  • 3. B.F. スキナー(B.F. Skinner)「50年をむかえた行動主義」
  • 4. C.R. ロージァズ(C.R. Rogers)「人間の科学をめざして」
  • 5. ノーマン・マルコーム(Norman Malcolm)「心理学の哲学としての行動主義」
  • 6. マイケル・スクリブン(Michael Scriven)「人間性の見方」


■マルコム「心理学の哲学としての行動主義」メモ

ロジャーズのスキナー批判は失敗している、というのがマルコムの考え。

  • I 不一致の失敗
  • II 行動主義の哲学的基礎
  • III 行動主義の誤り
  • IV 結論

I 不一致の失敗

[スキナーいわく、「のどがかわいたので飲んでいる」は説明的虚構による説明である。というのは、] 

  • もし のどが渇いている ことが、飲みたがっていることそのものをも意味しないとすれば、これは単なる冗語にすぎない。
  • もしそのことが 彼がかわいている状態ゆえに 飲む、という意味であるなら、内的原因となることがらが引き出されてきている。
  • もしこの状態が単なる推理によるもの、つまり、もし直接観察できるような次元がぜんぜん含まれていないのなら、それは説明とはなりえない。
スキナー『科学と人間行動』(原著 p.33)

 ある人が あることをする「目的」について話すとき、またはその人が「気落ちして」そのことをするのをやめたというとき、おそらく暗黙のうちに、彼の行動をコントロールしている独立変数を考えに入れることをしていないとすると、あなたは言う価値のあることを何もいっていないことになる。[p.207]

同(原著 p.36-37)

II 行動主義の哲学的基礎

  • 行動主義は、カルナップ流の物理主義を心理学において展開したもの。
  •  

IV 結論

 行動主義は、精神現象の言語と外的環境や行動との間に、概念的な結びつきがなくてはならないという主張においては正しい。もし その結びつきがなければ、われわれは他者を理解できないし、自分自身さえ理解できない。 [p.222]

討論

さすがのウィーナー先生。

キャンパスで同僚との立ち話をすませて。

  • 「あなたと出会ったとき、私はどっちの方向に行っていましたか?」
  • 「あなたは、あっちへ向かってましたよ」
  • 「ああそうですか。それはでは私は昼食をすませてきたところです。」[p.227]