借りもの:伊藤雅之(2021)『現代スピリチュアリティ文化論:ヨーガ、マインドフルネスからポジティブ心理学まで』

朝カル講義用:

現代スピリチュアリティ文化論 - 株式会社 明石書店

  • はじめに

第一部 現代スピリチュアリティ文化の理論と研究アプローチ

第二部 現代幸福論とスピリチュアリティ文化の諸相

  • 第四章 マインドフルネスと現代幸福論の展開
  • 第五章 現代マインドフルネス・ムーブメントの功罪――伝統仏教からの離脱とその評価をめぐって
  • 第六章 グローバル文化としてのヨーガとその歴史的展開
  • 第七章 「スピリチュアルな探求」としての現代体操ヨーガ

第三部 スピリチュアリティ文化の開かれた地平

おわりに

2003年に出した本の続編です:

はじめに

第一部「現代スピリチュアリティ文化の理論と研究アプローチ」

第一章「現代スピリチュアリティ文化の歴史と現在──対抗文化から主流文化へ」

1-3「スピリチュアリティ文化とは何か?」
  • スピリチュアリティの特徴:
    ①当事者の体験の重視②つながり
    ③気づき(学び、感謝)
    ④ありのままの自分・本当の自分
1-4「スピリチュアリティ文化の変遷I(1960年代から90年代前半)」
  • 【学び】: 意識が変わらなければ世界は変わらない。
  • [038] 「ニューエイジ」関連本の各国での呼び方
    ・イギリス:マインド・ボディ・スピリット
    ・ドイツ: エソテリーク
    ・日本:  精神世界
  • MBSR:マインドフルネス・ストレス低減法
1-5「スピリチュアリティ文化の変遷II(1990年代後半から2020年まで)」

第二章「21世紀西ヨーロッパでの世俗化と再聖化──イギリスのスピリチュアリティろ論争の現在」

2-2「1960年代以降の世俗化論の成立と展開」
  • ホセ・カサノヴァによる「世俗化」論の三つの契機
    ①社会分化
    ②宗教的信念や実践の衰退
    ③私事化
2-3「イギリスの世俗化論争」
  • [063]
    ・イギリスでスピリチュアルな活動に関わる人たちの中で30歳以下の者はわずかであり、40歳以上が83%を占める。
    ・イギリスでは20世紀のうちに、教会は人口の40%の信者を失った。
    ・それに対して、獲得されたニューエイジ人口はせいぜい2%程度である。
  • [065] 信仰すれども所属せず believing without belonging
  • [067] チャールズ・テイラー: 現代文化の大規模な主観的転回
  • 【話法】
    ・内なる声
    ・自己の真正性
    ・内なる神
2-4「宗教の世俗化と社会の再聖化」
  • [070] イギリスでは、オックスフォード大学、エクセター大学といった主要大学の附属機関にマインドフルネス研究所が設置されている。
第三章「現代宗教研究の諸問題――オウム真理教とそれ以後」

この章は2003年に執筆されたもの。同業者にインタビューしている。

3-3「「宗教」イメージの再考」

それまでなにしてたん。
宗教学者は、自分が共感できる対象を研究しており(85)、共感できないものはしてなかったと。

  • [086] オウム事件によって宗教学における宗教性善説が解体した。
  • [086] 厳しい櫻井義秀先生: 「でもまだ、私自身を含めて宗教学者は、伊藤さんもそうですけれども、「スピリチュアリティ」とか「癒し」という、いわばプラスの価値のなかで、ある種の耽溺があって、研究対象とともに楽しむというか、高揚感を味わうという流れが一方にあるんですけれども」

「伊藤さん」はこの本の執筆者=インタビュアーのことであります。

  • ◆芳賀学・弓山達也『祈る ふれあう 感じる―自分探しのオデッセー』 アルファベータブックス、1994 ISBN:4871984125
  • [090] 「山中弘と林淳は、宗社研世代より以前の研究者が「新宗教を社会的.心理的に逸脱なしい剥奪された人々の運動として否定的に捉える傾向があったのに対し、宗社研世代は「新宗教をそうとらえずにむしろ共感的に彼らの意味世界を尊重するとともに、さらにはそこには何か学ぶべきものがあると考えた」と分析する。」

このように、社会学の研究者が 理解と共感を区別できてないのを見せられるとさすがに驚いちゃうね。
批判と理解は矛盾せず両立するし、他人の意味世界の尊重は その人に共感しなくてもできるし、自分が否定的に評価している相手からでも学ぶことはできるよねぇ常識的に考えて。なんなんだこの論争は。

  • [092]「つまり、オウム真理教のように、宗教団体が研究者を宣伝に利用したり、信者がウソをついて研究者を騙したり、教義体系と実践に乖離がある場合…には内在的理解は通用しないのである。」

内在的理解が通用しないんじゃなくて、内在的理解の捉え方が間違ってるだけだよなぁ。
というか、こんな議論を続けるくらいなら、社会学者は、そもそも「理解」という語の使用をやめたらいいのでは?

第二部「現代幸福論とスピリチュアリティ文化の諸相」

第四章「マインドフルネスと現代幸福論の展開」

4-3「1960年代以降のマインドフルネスの広がり」

第五章「現代マインドフルネス・ムーブメントの功罪──伝統仏教からの離脱とその評価をめぐって」

5-4「仏教の革新性と社会適合」
  • 【言葉】: マク・マインドフルネス McMindfulness

第三部「スピリチュアリティ文化の開かれた地平」

第八章「ポジティブ心理学と現代スピリチュアリティ文化」

8-1「心理学とスピリチュアリティ文化とのかかわり」

ポジティブ心理学の否定しがたさ、監視カメラのそれに似てますね。

8-2「ポジティブ心理学の誕生と発展」

  • 214では、
    ポジティブ心理学は、従来の自己啓発書と内容的に重なるところもあるが、自己啓発の多くにみられる過度の一般化…をせず、科学的なデータに基づく検証がされている点が大きな特徴となっている」と書いてるのに、211では、
    「なお、ここで言うポジティブとは、…ポジティブ感情を指し、世間に広く知られる…ポジティブ思考とは大きく異なる」
    で片付けてるのは納得できないですねぇ。

第十章「「自己」論へのアプローチ──エックハルト・トールとネオ・アドヴァイタ・ムーブメント」

10-1「1960年代以降の現代スピリチュアリティ文化」
10-3「エックハルト・トールの思想」
  • [256] エックハルト先生曰く: 「スピリチュアルな目覚めとは、自分が知覚し、体験し、考え、感じている対象は、つきつめてみれば自分ではないし、つねに移ろう事物のなかに自分自身を発見することはできない、とはっきり見抜くことである。」
  • 【話法】[258] 「これはまさに八世紀インドの哲学者であるアディ・シャンカラが説いたアドヴァイタ・ヴェーダーンタ哲学(不二一元論)の自己論を継承したものと捉えることができる。」
    強い。
10-4「ネオ・アドヴァイタ・ムーブメントの展開」