荒川出版会読書会:渡邊芳之(2010)『性格とはなんだったのか──心理学と日常概念』

読書会があると聞いて。

性格とは、個人の歴史や他者との関係性のメタファーである!?

性格診断テストである16 Personalitiesの昨今の流行は、過去の血液型性格診断の流行を思い出させます。そこには、娯楽という側面がありつつも、わかりやすい性格についての説明を通じて、自己を“客観的”に理解したい、あるいは、他者を“客観的”に理解したいといった切実な願いもあるように思います。そのような性格診断は、理解のための手がかりの1つとして活用されるのであればよいのかもしれません。しかしながら、その診断がその人そのものを表していると捉えられると(例えば、あなたは建築家タイプだから几帳面だ!など)、自己理解からも他者理解からも遠ざかります。というのも、私たちにはそのような診断に収まらない多面性があるからです。
それにもかかわらず、「あなた」を捉えるものとして、種々の性格診断が、娯楽としても、産業としても、利用されているように思います。性格診断は本当に「あなた」を捉えているものなのでしょうか。私たちは性格診断とどのように付き合っているのでしょうか(あるいは、付き合っていくべきでしょうか)。そもそも、性格とは一体何なのでしょうか。
このようなことを考えるために、本読書会では、性格概念について心理学の立場から迫った『性格とはなんだったのか──心理学と日常概念』を読みたいと思います。本書に大きな刺激を受けた荒川出版会の仲嶺に加えて、パーソナリティ心理学が専門である下司忠大さんをファシリーテーターとして、性格とは一体何だったのか、性格診断とは一体何なのか(そして、その功罪)について、みんなで考えたいと思います。
ただし、本読書会では「正しく読むこと」を第一の目標にしません。本読書会では、本書を正しく読むよりも(それはそれで大事なことですが)、本書を通じて、たとえ誤読であったとしても、何かしらの知が生まれることを目指したいと思っています。本読書会では、性格、あるいは、性格診断という私たちの社会にあたりまえのように存在するものを、改めて自分たちなりに考え直せる機会をつくりたいと思っています。
みなさんのご参加をお待ちしています!

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まえがき

  • 心理学における性格の定義の二つの極
    • その人の内部にある、その人の行動を決めているもの
    • 他者または自分自身の目に見えるものであり、行動の観察から導き出されるもの
  • [iii] 「この本は、20世紀の性格心理学を代表する論争の一つである「一貫性論争」を軸にして、心理学における性格という概念の用いられ方を分析していこうとするものであるが、その根底にある問題意識は、「心理学は性格をどのように定義し、用いてきたか、そして心理学者はそれらの定義と用法をみずから意識し、明示してきたか」と言い換えることもできる。」

第1章 性格と心理学

第1節 性格心理学小史

  • [007] フロイトの考えの中で後の性格心理学にもっとも大きな影響を与えたのは、性格を個人の「適応」から理解しようとする発想である。フロイトは、それまでに異常で無意味な行動としてしか理解されていなかった神経症的な行動や日常的な錯誤、防衛的な反応などを、個人が自分のおかれた状況との関係においてとる適応的な行動として解釈し、その適応のメカニズムを精神分析によって明らかにした。」
  • [008] 「狩野は、人格障害についての論考のなかで、精神分析的な性格の理論を、
    [1] 性格の諸特徴を欲動の発達と固着から特定の発達段階に還元しようとするもの、
    [2] 自我の防衛や防衛機制からとらえるもの
    [3] 自己愛の発達や障害から考えるもの
    [4] 文化や歴史の影響を心理・社会的視点からとらえるもの、
    [5] 乳幼児期の対象関係の発達からとらえるものそして
    [6] 以上を統合して性格の構造や機能を考えるもの、
    の6種類に分類している。」

第2節 本書の構成

第3節 性格に関連する概念

第2章 心理学において、性格概念はどのように用いられてきたか

第3章 一貫性論争──なにが争点だったのか

第1節 一貫性論争前史

第2節 ミッシェルの『パーソナリティの理論』

第3節 一貫性論争の展開

第4節 一貫性論争の意味

第4章 性格概念と行動観察との関係

第1節 傾性概念と理論的構成概念

第2節 通状況的一貫性と行動観察の問題

第3節 性格の形成と通状況的一貫性

第4節 心理学的測定と操作的定義の問題

第5節 一貫性論争は擬似問題である

あとがき