II-II 言説形成

このへんからいよいよ本論。
この節では、

  • [a] 研究を始めた時に持っていた見通し(仮説)と、
  • [b] 研究を進める中でそれらが裏切られ、かわりに得られた見通しと

の対比が4つ提示される(p.064以降)。
で、III〜VII にて それぞれが敷衍される。


p.75 のまとめ部分からの引用:

  • 出発点となった問い: 我々の慣習に課されている──医学なるもの、経済学なるもの、文法なるものとして指示されている──諸言表の大きなグループに関して、私は、それらが自らの統一性の基礎としうるのはいったい何か、と自問したのだった。[079]
[a][b]
[1] 対象領域それは充実して密度が濃く、連続的でありながら地理的にはっきりと切り分けられた、一つの対象領域であろうか。しかし、私の前に現れたのはむしろ、欠落のある錯綜した諸々の系列であり、差異、隔たり、置換、変換の諸々の作用であった。
[2] 言表行為のスタイルそれは言表行為の明確で規範的な一つのタイプであろうか。しかし私は、互いに あまりにも大きく異なるレヴェルに属し、互いにあまりにも異質な機能を持つために、唯一の形象のもとに結び付けられて組み立てられることもできず、時間を貫いて個々の著作のかなたに一種の大いなる中断なきテクストを装うこともできないような、諸々の言述を見出したのだった。
[3] 概念それは明確に定義された観念体系であろうか。しかし、目の前に現れるのは、その構造や仕様の諸規則を異にする諸概念であり、互いを知らなかったり互いに排除しあったりして論理学的建築の統一性の中に納まることのできないような諸概念である。
[4] 主題/戦略的選択それは一つのテーマ系の永続性であろうか。ところが、見出されるのはむしろ、料率不可能な諸々のテーマを活性化したり、一つのテーマを互いに異なる諸々の集合の中に充当したりすることを可能にするような、多様な戦略的可能性なのである。
  • 以上のことから生じるのが、そうした分散そのものを記述しようという考えである。[076]