吉沢『世界の儚さの社会学』/ルーマン『信頼』

通りすがりに──『フッサール哲学における発生の問題』は跨ぎ越して──こいつらを ちらっと確認。

信頼―社会的な複雑性の縮減メカニズム

信頼―社会的な複雑性の縮減メカニズム

世界の儚さの社会学―シュッツからルーマンへ

世界の儚さの社会学―シュッツからルーマンへ

  • 第1章 準拠問題:社会的な複雑性
  • 第2章 存続と出来事
  • 第3章 不可逆性のメタファー
  • 第4章 世界と〈できごと〉
  • 第5章 観察と他者性

遠くから概観する限り、60年代後半と80年代、そして90年代とで、時間に関する議論の構図が変わったようにはみえない。〈出来事〉や〈同時性〉といった鍵概念はすでに『信頼』(第2章)に登場しており*、考察の出発点にして繋留点が 〈立ち留まること/流れること〉というペアであることには変わりがない。
ただし『信頼』では、〈出来事〉概念は、〈存続/出来事〉というペアのもとで登場している。80年代初頭まで*のどこかで 語用──何を出来事と呼ぶか──が変わっている可能性もあるが、この点に関しては 議論をもっと詳細に追いかけてみないと判断しがたい。

『信頼』には、フッサールとともにベルクソンの名も一緒に出てくる。このあたりは、まだシュッツの影響を引きずっているのかな(?)、と感じさせはする。

ちなみに『信頼』(1968/1973)では、ブラント『世界・自我・時間―フッサール未公開草稿による研究 (1982年)』(1955)経由でC草稿が参照されている。ヘルト『生き生きした現在―時間と自己の現象学』(1966)はまだ登場していない。
ルーマン先生曰く:

  • 一方では、ものごとは出来事として同定されうる。現在の体験は、時点の系列上を先へ先へと進み・つぎの時点でもやむことなく将来から過去へと移っていくが、しかし[出来事としての]ものごとは、現在の体験とは独立に、特定の時点に固着したままである。したがって出来事は──将来的・現在的・過去的という資格づけとは独立に──時点に結びついた同一性をもっているのであって、その同一性の意味は、まさしく時間的資格の変転に抗う不変性にある。しかし出来事は、現在において現実となりうるために、[...] この時間的資格の変転を必要とする。
    他方では、ものごとは、時間の変転と独立に持続する存続として同定されうる。すべての将来的なものは到来し・過去的なものは去っていくのに対して、かかる存続としての持続は、そのつど連続的な・実際に 現存するGegenwart という在り方を持っている。したがって存続は、現在的にのみ同定されうる。将来あるいは過去においては、存続は、たかだか出来事の列として把握されうるにすぎず、持続的に現在的な期待あるいは持続的に現在的な記憶と言う変容した形態において存続たらしめられる4。[p.16]
4 存続するものは、すべてこのように必然的に現在的であるということは、こんにちの客観化的な科学においては適切に理解され得ない。[...] 信頼の理念にとっては、あらゆる存続の確実性は 現在との関係を免れ得ないということが、本質的な洞察となるのであって、この洞察なしには、信頼の時間的な問題は把握され得ない。
  • 信頼は、ただ現在において獲得され維持されうる。信頼は、不特定の将来によっては換気されはしないし、過去によって換気されることもない。というのも既在[のものごと]といえども、将来になって それとは別の過去が発見されるという可能性の前では もはや確実ではないからである。このように、信頼は 現在に関係づけられている。しかし そのさいに、現在が、単に時点に固着された出来事のありかたに応じて単なる時の点(Moment)として・ある出来事が起こる瞬間(Augenblick)として考えられているあいだは 信頼が現在に関係づけられているということは把握され得ないし、そう関係づけられていることの帰結もまた明らかにはなりえない。[p.19]
ニクラス・ルーマン『信頼』第2章「存続と出来事」

ちなみにヘルトのテクストに出てくる「〈私は作動する〉のもつ〈内的脆さ〉のゆえに決して中断できない努力」というのが、ルーマンの謂う「現在における強制」──したがって/ひいては「システムの安定性」──に相当するもの。でしょう。

* 吉沢本は80年代初頭までの議論をまとめたもの。ところで いま確認して気がつい──て驚愕し──たことには、なんと吉沢本(の第3章)では、フッサール時間論がまるで考慮されていない(!)。 な ん だ こ れ は (´・ω・`)
ハイデガーの出来事──性起──論で押していけるところはもちろんあるだろうけど、当然フッサールに立ち返るべきところまで無理に議論を進めているので、全体として議論がワヤなことになっておる。