タミソン1:吉田民人(1995)「ポスト分子生物学の社会科学」

1995年 日本社会学会大会会長講演。

  • A 法則と規則
  • B 分子生物学科学史・科学哲学的な解釈と評価
  • C プログラム解明科学を基礎づける認識論的根拠
  • D プログラム解明科学を基礎づける存在論的根拠
  • E プログラム概念の定義
  • F プログラム形態の進化
  • G シグナル性プログラム科学とシンボル性プログラム科学
  • H 法則とプログラム,をめぐる3つの解釈
  • I シンボル性プログラムの諸類型
  • J プログラム科学の 5 つの基本的課題
  • K プログラム科学における法則の存否
  • L 法則科学およびプログラム科学における文化的・歴史的要因の位置づけ
  • M プログラム科学という自覚がもたらす、従来の科学論的言説への波及効果
  • N 先行する類似の主張との比較対照

E

「プログラム」の概念を,

  • 対応規則(correspondence rule)的な視点から定義すれば,
    • 「一定の〈情報学的自己組織システム - 状況〉系に内在して、当該システムの内外の資源空間・情報空間の諸要因を選択的に産出し、かつその在り方を指定・制御する、一定の進化段階の情報(記号の集合)」、
      あるいは「一定の〈情報学的自己組織システム - 状況〉系に内在して、当該システムの内外の資源空間・情報空間の産出とその構造および過程を制御する一定の進化段階の情報(記号の集合)」とでもなるだろう。
  • 他方、それをカルキュラス(calculus)的な視点から定義するなら、
    • 「一定の〈情報学的自己組織システム - 状況〉系に内在して、当該システムの内外の定性的・定量的な諸変項とその変域、諸変項の共時的・通時的な関係、そして諸変項の値などを選択・指定する、一定の進化段階の情報(記号の集合)」となるだろう。

J

  • 33】シグナル性かシンボル性かの別をとわず, プログラム解明科学は, つぎの 5つの課題を解決しなければならない。
    • 第 1 に, プログラム「それ自体」の記述的・規範的解明,
    • 第 2 に, プログラムの「作動 (発現ないし実現) 過程」の記述的・規範的解明,
    • 第 3 に, プログラムの「作動 (発現ないし実現) 結果」 の記述的・規範的解明,
    • 第 4 に, プログラムの「ライフサイクル」(生成・維持・変容・消滅)の記述的・規範的解明, そして
    • 第 5 が, プログラムの「相互連関」の記述的・規範的解明である。

  • 因みに, プログラムの作動過程の研究は,
    • (1) プログラム作動を制御するプログラム,
    • (2) 各種の「プログラム操作」, すなわちプログラムの選択,プログラムへの言及,プログラムの解釈, プログラムの確定化・具体化,複数のプログラムの合成と調整など,
    • (3) プログラム作動の重要な前件的条件となる資源空間の状況, およびそれに関する認知情報, そして
    • (4)資源の一つ (関係的資源) としての「社会的勢力, とりわけ権力の布置」等々の「状況的要因」の分析を不可避・不可欠の課題としている。

エスノメソドロジー学派がいうindexicality は, 主に, プログラム作動を規定するこれらの状況的要因を意味している。