朝カル4月講座準備:http://socio-logic.jp/luhmann_acc/
付録でついてる小川浩三さんの解説が面白くて勉強になります。
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ニクラス・ルーマン「法律的論証──その形式を分析する」
1.
- 「法的論証」と「法的状況についての処理 Verfügungen)」の区別
- 処理⊃論証
- 文献
- 1) スティーヴン・トゥールミン(1958)『議論の技法』
- 4) ナイジェル・ギルバート&マイケル・マルケイ(1984)『科学理論の現象学』
- 5) H・L・ハート(1961)『法の概念 第3版 (ちくま学芸文庫)』
2.
- 二次の観察としての「論証における区別」
- 〈根拠/誤謬〉
- 「根拠づけ」は論証を根拠の如何によって二値コード化する。
- 論証は〈誤謬のある領域/誤謬のない領域〉の後者の範囲内で行われなければならない。
- 根拠も誤謬も、論証の文脈を予め限定するもの。
- 〈条文/ケース・問題〉
- 通用している法は、さまざまの条文という形で前提とされる。
- 様々のケース・問題は、引用すべき条文を指定する。
- 〈論証/解釈〉
- 条文について異なる解釈が可能な場合にのみ、論証の余地がある。
3. 〈redundancy / variety〉の導入
提題。
[24] われわれは、はっきりと問わなければならない。
- いかなる形式によって(…)われわれは、〈それぞれに法的事象を観察する論証者〉を観察しようとするのか。
- かれら自身の形式によってか、それとも別の形式によってか?
別の言い方をすれば、これはセカンドオーダーの観察及びサードオーダーの観察という手段の利用に関わる問題であり、認識論のポリシーという視点から見れば、そのようなセカンドオーダーのサイバネティクスが、究極の原理や根拠や公理やアプリオリや〈大きな物語(metarecits)〉等々の問題において〈覚悟のうえの断念〉により特徴づけられる状況からの脱出口を示せるかもしれない、という推定に関わる問題なのだ。
ルーマンは〈冗長性/変異〉でいきますよ、と。しかしこの議論はおかしいよなぁ。
問題になっているのは、「法的論証に対して論証理論はオートロジカルに乗っかってしまう。それに対して距離を取るにはどうしたらよいか」といったことだと思うのだが*、「法律家とは異なる区別を用いて議論する」というのは なるほどトリヴィアルな解ではあるけれど、それしかやり方がないわけではないだろう。
なにより簡単に(簡単な)答えを出しすぎである。もうちょっと よく考えろよ。
* その部分も後日 引用しておくことにしよう。
- 〈情報/冗長性〉:
- 情報(新しいこと)が もたらされるのは、意外でないもの(冗長性)からの区別によってである。
- 冗長性が必要とされるのは、情報処理のためだけである。→情報の冗長性:〈意外なこと/意外でないこと〉
- [026]〈情報/変異〉:
- 変異:複雑性の尺度
- 根拠づけの機能:
「システムが環境からの刺激に反応して自己の可変性を高める誘惑に曝される一方で、論証は既存の冗長性に支えられつつ冗長性を回復するために役立つ。これが根拠づけの機能なのだ。」
「論証は、よく知られた根拠を再活性化し、先例との区別と先例変更によってときには新たな根拠まで発見して、システムが若干の新たな情報によって自己の現在の状態と今後の状態を比較的迅速に読み取れるようにするのである。システムは 論証によって、不意打ちのショックを耐えられる程度まで和らげ、「安心できる流れに加えられた若干の違い」としてのみ情報を受け入れることになる。」
論証とは創出である。
- 文献
- 20) 〈redundancy / variety〉の出典: Martin Shapiro, Toward a Theory of "Stare Decisis", The Journal of Legal Studies, Vol. 1, No. 1 (Jan., 1972), pp. 125-134
→On Law, Politics, and Judicialization - 21) 〈redundancy / variety〉について:アトラン(1979)『結晶と煙のあいだ―生物体の組織化について (叢書・ウニベルシタス)』
Atlan, H. (1989). Noise, complexity and meaning in cognitive systems. Rev. Intern. - 22
- 20) 〈redundancy / variety〉の出典: Martin Shapiro, Toward a Theory of "Stare Decisis", The Journal of Legal Studies, Vol. 1, No. 1 (Jan., 1972), pp. 125-134
22 Donald M. MacKay, Information, Mechanism and Meaning. Cambridge Mass. 1969* における情報と意味(意味の場合、情報が反覆によって不要になるということがないので、万端性の代表的な例である)の区別をも見よ。
4. 論証作業を──〈根拠/誤謬〉に代えて──〈情報/冗長性〉で観察する
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5.