岩田文昭(2000)『フランス・スピリチュアリスムの宗教哲学』

総特集:霊性


岩田文昭(2000)『フランス・スピリチュアリスム宗教哲学

  • 序 / p1 (0006.jp2)
  • 第一章 フランス・スピリチュアリスムの名称と定義
  • 第二章 メーヌ・ド・ビランの思索と課題
  • 第三章 ラヴェッソンにおける自由の媒介としての自然

  • 第四章 努力観の深化としてのベルクソン宗教哲学
  • 第五章 ラシュリエの反省哲学とその問題点
  • 第六章 ブロンデル『行為』における反省と宗教
  • 第七章 リクール解釈学の由来と展開

  • [4] 「フランスにおいて宗教哲学は、信者の立場からすれば、充分に宗教的なものではなく、信仰を拒絶する人からは、哲学的とは映っていない。このようなフランスの思想状況には、カトリックが大きな影響力を持つなかで、政治や教育といった分野で世界に類例をみないほど聖俗の分離が試みられてきたという歴史的背景が大きく彫響していることは容易に想像できる。このような状況を踏まえつつ、あえて宗教と哲学との両面に対して、緊張状況にたつという点に本論文の立場がある。」
  • この二本立てでまいります:
    ・直観のスピリチュアリスムベルクソンとか)
    ・反省のスピリチュアリスム(ブロンデルとか)
  • [6] ベルクソン先生曰く:
    「近代の哲学的思考がメーヌ・ド・ビランに従わず、むしろカントの方に従ったことは、何とも残念なことだった。カントは哲学的思考を袋小路へと引きずりこんでしまった。」

第一章「フランス・スピリチュアリスムの名称と定義」

1-1「フランス・スピリチュアリスムの登場」
  • [8] 「ブロンデルの指摘によれば、スピリチュアリスムという単語そのものは十七世紀の神学者のテキストに登場する。しかもそこでは、否定的な意味で用いられているにすぎない。すなわち、この単語によって霊性の悪用や偽の神秘神学を指し示していたのである。しかレ十八世紀の後半には、スピリチュアリスム形而上学の実体に関わる言葉として、「唯物論」と対比されるしかたで用いられるようになった事例が指摘できる」
  • [8] 語「フランスのスピリチュアリスム」の初出は 1868年のジャネの論文「19世紀のフランス・スピリチュアリズム」。
  • [8] 1867年、ラヴェッソン『十九世紀のフランス哲学に関する報告』における宣言:
    「したがって多くの兆候からして、〈レアリスム・スピリチュアリストないしポジテイヴィスム・スピリチュアリスト〉と呼ばれるものが一般に支配的特徴となる哲学の時代がほどなく到来すると、予見することができよう. このスピリチュアリストにおいて発生原理となるのは、存在について精神がそれ自身において抱く意識である。この存在に他の全ての存在が由来し依存することを精神は認めるのであり、そしてこの存在とは精神の行為にはかならないのである。」