お買いもの:山之内靖(2015)『総力戦体制』

総力戦体制 (ちくま学芸文庫)

総力戦体制 (ちくま学芸文庫)

  • 刊行にあたって(伊豫谷登士翁)

I

  • 第1章 総力戦の時代

II

  • 第2章 戦時動員体制の比較史的考察──今日の日本を理解するために
  • 第3章 方法的序論──総力戦とシステム統合
    • 一 総力戦と社会の編成替え
    • 二 ヘーゲルからパーソンズ
      • 1 社会秩序の可能性
      • 2 近代社会のシステム論的考察
      • 3 現代社会の機能主義的再編成──パーソンズ
    • 三 システム社会と私生活の公共化
    • 四 戦時期日本の社会政策思想
    • 五 国民国家を超える可能性

III

  • 第4章 戦時期の社会政策論
  • 第5章 戦時期の遺産とその両義性

  • 第6章 日本の社会科学とヴェーバー体験──総力戦の記憶を中心に
  • 第7章 1930年代と社会哲学の危機

IV

  • 第8章 総力戦体制からグローバリゼーションへ
  • 補論 特別インタビュー 総力戦・国民国家・システム社会

参照文献

第3章 方法的序論──総力戦とシステム統合

1997年刊行の論文集『総力戦と現代化 (パルマケイア叢書)』への序文。(版元

* 「このような」が正確には何を指すのかは判明ではない。「階級社会からシステム社会への移行」は本文にある表現で、注6はここに付されたものだが、この注はかなり長大。「この観点/このような観点」という表現は三段落からなる最初の段落と最後の段落で使われており、同じものを指すと読むのが普通の読み方だろう。そして最初の段落の「この観点」が「階級社会からシステム社会への移行」を指すのは間違いない。上掲「山之内がこのような観点を構成するにあたってもっとも大きな示唆を受けたのは、カール・レーヴィットの諸著作であり、」は後者からのもの。なので、読解の普通のお約束からすれば、まずは

山之内が〈階級社会からシステム社会への移行〉なる観点を構成するにあたってもっとも大きな示唆を受けたのは、カール・レーヴィットの諸著作であり、
と読むべきところだろう。けど、そうだとしたら議論が雑すぎるのでにわかには支持しがたい。


この箇所はこの論文集の読解にとって重要であるように思われるので、少し長めに引用しておく。まず本文[65-66]:

… 総力戦体制は、社会的紛争や社会的排除(=近代身分制)の諸モーメントを除去し、社会総体を戦争遂行のための機能性という一点に向けて合理化するものであった。社会に内在する紛争や葛藤を強く意識しつつ、こうした対立・排除の諸モーメントを社会制度内に積極的に組み入れること、そうした改革によってこれらのモーメントを社会的統合に貢献する機能の担い手へと位置づけなおすこと、このことを総力戦体制は必須要件としたのである。こう考えてみれば、総力戦体制が機能主義的に組織されたシステム社会の成立において重要な経過点をなしたことは、すでに疑いのないところだといってよい。…/以上の見通しに立脚することにより、この序論では、総力戦体制によって遂行された編成替えの性格を「階級社会からシステム社会への移行」という観点に立ってとらえてみることにしよう6。この私の仮説が有効であるかどうかは、今後の歴史研究に待つ他ないが、ここではさしあたり、現代におけるシステム論的社会理論の起点をなしたタルコット・パーソンズの所説を取り上げ、システム社会にかんする彼の構想がどれほど総力戦体制下に進行した編成替えと照応しているかを考察することとしよう。

ここで「機能」と言われているのは「戦争遂行」のこと。そしてこの箇所に付いた注6[121-122]:

  1. この観点はあくまで[論文集『総力戦と現代化』の]編者としての私の個人的見解であ[り、著者間の相違のうちもっとも重大なのは〈近代化/現代化〉を明確に区別するか否かにある]。
  2. 「現代化」として山之内が念頭においているのは、古典的近代が階級社会としての性格を強く帯びた資本主義社会であったのにたいし、現代社会はシステム社会としての性格を強く帯びた資本主義社会へと転換したという事実である。総力戦の時代について、これを「階級社会からシステム社会への移行’ととらえる場合、山之内は次の諸事実を指標としている。システム社会化により、
    • (A) 階級対立は国家を仲介とする労使交渉の場に移され、社会的に制度化された。また国家の介入を通して社会的上昇ルートが設定され…、階級の壁を超える社会的流動性が制度化された。
    • (B) … ヘーゲルは近代社会を構成する家族・市民社会・国家のそれぞれにたいし、他の二者には還元できない特別な社会的位置を与えていた。だが総力戦時代を経過することにより、国家と市民社会、家族と市民社会の間の境界線は曖昧化し、相互浸透が進行した。国家と市民社会の相互浸透はいわゆる福祉国家をもたらし、家族と市民社会の相互浸透は私生活の公共化あるいは公共空間の私的空間化をもたらした。
    • (C) 以上の二過程を経過することによって、現代社会は古典的近代とは異なる段階に到達した。ここでは、階級対立その他の社会的紛争は歴史的変動をもたらす主要な動因ではなくなり、絶えず社会的にルール化され、制度化されてゆく。しかしそれに替わって新たな問題群が登場する。社会システムによっては容易に吸収されることのない他のシステム領域、すなわち身体システムおよび生命系システム(自然環境システム)が、社会システムとの間にきわめて深刻な摩擦を起こすからである。
  3. 山之内がこのような観点を構成するにあたって最も大きな示唆を受けたのは、カール・レーヴィットの諸著作であり、なかでも…『学問とわれわれの時代の運命』…であった。

田村由美(2017-2019)『ミステリと言う勿れ』1-4

識者のご教示による。

Ann M. Blair, Organizations of Knowledge”

「インテレクチュアル・ヒストリー夏期集中セミナー」@東洋大・8月9日の課題文献。


Ann M. Blair, “Organizations of Knowledge”

  • Classification of the disciplines
  • The organization of facts in history and natural history
  • The organization of objects
  • In summary


あわせてこれも。


追加

グラフトン(1991→2015)『テクストの擁護者たち』


テクストの擁護者たち: 近代ヨーロッパにおける人文学の誕生 (bibliotheca hermetica 叢書)

テクストの擁護者たち: 近代ヨーロッパにおける人文学の誕生 (bibliotheca hermetica 叢書)

勁草書房

  • 序章 人文主義者たちを再考する
  • 第一章 古代のテクストとルネサンスの読者たち
  • 第二章 ポリツィアーノの新しい学問とその背景
  • 第三章 捏造の伝統と伝統の捏造──ヴィテルボのアンニウス
  • 第四章 スカリゲルの年代学──文献学、天文学普遍史
  • 第五章 新教徒vs預言者──カゾボンのヘルメス批判
  • 第六章 ヘルメスとシビュラの奇妙な死
  • 第七章 ルドルフ二世のプラハにおける人文主義と科学──背景からみたケプラー
  • 第八章 ラ・ペイレールと旧約聖書
  • 第九章 ヴォルフ序説──近代歴史主義の誕生

借りもの

所有研と『ルーマン解読』用。
またもや家にあるはずのものを借りてる・・・

ルーマン研報告:「主体性と個人の個性」用

socio-logic.jp

対象文献


ルーマン学説研究の難しさについて考えてみた:

  • ①そもそも論考のストーリーがわからない
    • ①' どれがルーマン自身の見解なのかわからない
  • ②どうすれば裏を取れるかわからない
    • ②' どんな文献をどの程度まで渉猟すればよいのか見通しが立たない
  • ③当該文献を自分が理解できるかどうかわからない
  • ④ 得られた知見をもとにルーマンの議論を再構成できるかどうか見通しが立たない



  1. 1987 注28 T.S.エリオット『カクテル・パーティ (1951年)
  2. 1987 注07 ノヴァーリス日記・花粉 (古典文庫 35)ISBN:B000J941J8 前田敬作訳
  3. 1987 注08 E.T.A. ホフマン『ホフマン全集〈7〉牡猫ムルの人生観 (1972年)深田甫
  4. シャルル・ボードレール(1857/1861→1991)『悪の華 (集英社文庫)安藤元雄訳、集英社文庫ISBN:4480786015 ISBN:4480033912 阿部良雄
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480033918/
  5. 1988 注131 S. ルークス『個人主義 (1981年)
  6. 1988 注133 リチャード・ホフスタッター(1944→1973)『アメリカの社会進化思想 (1973年) (研究社叢書)
  7. 1988 注136:ワイリー・サイファー(1962→1971)『自我の喪失―現代文学と美術における河出書房新社
  8. 1988 注139:ホモ・コピー;
    スタンダール恋愛論 (新潮文庫)asin:400375087X asin:4003750888 asin:4003252616 asin:4003252624
    ハイデガー存在と時間
  9. 1987 注21 / 1988 注139:ホモ・コピー;ジラール『欲望の現象学
  10. リュシアン・ゴルドマン(1964→1969)『小説社会学 (1969年)』合同出版
  11. 1988 注142:個人の内面の複数性;
    ラ・ブリュイエールカラクテール―当世風俗誌 (上) (岩波文庫)asin:4003251628 asin:4003251636
  12. 1987 注20 / 1988 注151:個人の内面の複数性;
    ヴァン・デン・ベルク(1974→1980)『引き裂かれた人間引き裂く社会勁草書房
    ロマン主義プラグマティズムの比較

ドイツ文学史

  1. アンジェロス(1948→1966)『ドイツ文学史 (文庫クセジュ 11)』原田義人 訳
  2. 菊池栄一(1955)『ドイツ文学史 (1955年)東京大学出版会
  3. 渡辺格司(1963)『ドイツ文学史―古典・浪漫 (1963年)』 三和書房
  4. 佐藤晃一(1972)『ドイツ文学史明治書院
  5. 藤本淳雄ほか(1977/1995)『ドイツ文学史ISBN:B000J8U0TE 東京大学出版会
  6. 手塚富雄・神品芳夫(1993)『ドイツ文学案内 (岩波文庫)岩波文庫
  7. ヨースト・ヘルマント(1994→2003)『ドイツ近代文学理論史』斎藤成夫訳
  8. 神品芳夫編著(1998)『ドイツ文学―歴史のなかで文学の流れをみる (放送大学教材)放送大学教育振興会
  9. ハインツ・シュラッファー(2002→2008)『ドイツ文学の短い歴史和泉雅人・安川晴基訳、同学社
  10. 柴田翔編著(2003)『はじめて学ぶドイツ文学史 (シリーズ・はじめて学ぶ文学史)
  11. 保坂一夫編著(2003)『ドイツ文学 (放送大学教材)放送大学教育振興会
  12. 前野光弘・青木誠之・鈴木克己(2011)『知っておきたいドイツ文学明治書院

人格/ペルソナ

その他

十九世紀ドイツ文学研究会編(1988)『ドイツ近代小説の展開』

目次見ると ぜんぜん足並み揃ってない感がすごい。


  • 序論

I ロマン派からビーダーマイアー期まで

  • E・T・A・ホフマン『牝猫ムルの人生観』
  • メーリケの『画家ノルテン』
  • 歴史意識と語り手の役割──ヴィリバルト・アレクシスの「祖国小説」に寄せて
  • インマーマンの『ミュンヒハウゼン』
  • シュティフター『晩夏』──宝石の書

II 写実主義から世紀末まで

  • フライタークの『貸方と借方』(鈴木敏夫
  • シュピーゲルハーゲンの『大津波』(山戸照靖)
  • ケラーの『マルティーン・ザーランダー』──語りの構造に留意した解釈の試み(杉本正哉)
  • ラーベの『フォールゲルザングの記録』(平田達治)
  • ‪フォンターネの『シュテヒリン湖』(立川洋三)‬
  • トーマス・マンの『ブッデンブローク家の人々』(片山良展)‬

III 現実との出会い

  • ハイネと故郷‪(木庭 宏)‬
  • ヘッベルと48年革命(佐藤正樹)
  • シュティフターと1848年──歴史小説構想の経緯(松村國隆)
  • シュトルムと故郷(松井 勲)
  • フォンターネの『迷い、もつれ』における社会性(小菅善一)
  • ラーベの『シュトップフクーヘン』に現れたフモール(竹内康夫)

IV 都市と文学

  • ふたつのベルリーン物語──E・T・A・ホフマンにおける都会の描写と「語りの原理」(光野正幸)
  • ビーダーマイヤー期のウィーン(前田彰一
  • ケラーとチューリヒ
  • クレッツァーのベルリン小説──リアリズムから自然主義

V 抒情詩における風景描写

  • あとがき

こういうのも出してるそうです。