所有 dominium

466 第10章「構造的カップリング」 III「政治システムと経済システムの構造的カップリング

この節は「財政投融資」の歴史、かな。

470で挙げられているトピックは、税と国債、納税義務、補助金政策、科学技術の振興促進、投資促進のための立法や産業の国外立地を動機づける立法、国家の信用保証、労働市場への介入、政治的な投融資によるインフラ改善、中央銀行政策、などなど。

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 中世においては、権限(Kompetenz)の概念を区別できただけであった。つまり、

  • (合法的な)政治のためには 権力 potestas が、
  • 司法のためには 裁治権 iurisdictio が、
  • 経済、特に土地所有からの収入のためには 所有権 dominium が、

といった具合である。このようにして、その活動領域とそれに特有の問題を区別できた。

たとえば、
  • 所有権には、いかにして、まだ封建法によって秩序付けられていた土地所有を信用貸しに対する補償として役立てることができるのかという問題が、
  • 裁治権には、いかなる条件のもとで 国家緊急権 ius eminens としてのこの権限が、違法行為の正当化に利用されうるのかという問題が
付随していた。

これらの諸権限が連関しあっていることは自明であり、一つの権限はそれ以外の権限なしでは活性化されえなかった。機能分化へと移行することによって、この問題は新たに定式化されなければならなくなった。いまや、このような問題は、相互依存、相互支援、相互刺激の問題として登場する。こうした事態に対して我々は、構造的カップリング概念を有する理論によって、対応しようというわけである。

511 第11章「政治の進化」 II「政治システムの進化」

こちらでは、「政治システムの第一局面」としての王朝の成立に関連して登場する。
Land と Herrschaft の秩序の下における dominium。
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 政治進化のこのような第一局面の成果を、支配 Herrschaft という概念で指し示すのは、十分意味がある。というのは、この概念は、次のことを示唆するからである。

  • 全体社会の成層化と親和的であること。
  • あらゆる生活領域にわたって影響力を持つ重要人物の存在と調和的であること。
  • これらと並行して構築されている土地所有の秩序(…)と調和的であること。
    • つまり、総じて言えば、政治的な〔進化上の〕成果が、まだ、全体社会の秩序のなかにかなりの程度《埋め込まれて》いること。

この支配という概念は、統治権 imperium と 所有権 dominium と 権力 potestas という(ラテン語ではそれぞれ分けて考えられている)三つの言葉の連関を前提としている。

領主 Herr という概念は、領邦 Land という反対概念を必要とし、この二つの概念が相まって、社会秩序全体が記述されている。ヨーロッパ中世においては、古典古代から引き継がれてきた 家秩序(oikos, 村 vicus) が、こうした秩序に取り込まれた。そういうわけで、ローマ帝国の官僚制が崩壊した後、分取津下政治的権力という残留物が生き残り、これが貴族世界と融合しえた。

のちに《国家 Staat》と呼ばれるようになるもののすべてと比べてこうした秩序が異質であることは、こんにちではもはや異論の余地がない。支配という概念をいつまでも使い続けるのを避け、国家概念をこうした秩序にまでさかのぼって関連付けるのを止めることによって、これが正当に評価されよう。