増田泰子(2000)「高度経済成長期における「自己啓発」概念の成立」

本日もひとさまのおかげで論文が読めまする。

 本論文は企業の内部における霰業能力の評価制度と能力開発の関連について、戦後の日本企業の中で査定を通じた労務管理システムと教育訓練とが結びついていく過程を明らかにしようとするものである。このため1970年代以降の企業内教育の中で重要視されてきた「自己啓発」という語に注目し、この語によって表わされる一連の行為や規範を「自己啓発」概念として、その成立過程を1960年代の企業経営者および管理者の意思決定の経緯に沿って分析した。
 「自己啓発」概念は高度成長期の労働力の変化に対応しようとする中で、賃金体系を柔飲な連用が可能な「職務遂行能力」に基づくものに改める過程で成立した。それは潜在能力の発見-能力の開発-業績としての能力の発揮という「プロセスとしての能力」を前提としており、教育訓練を賃金や昇追と結びついた労務管理システムの中に組み込んでいき、70年代以降の「日本的経営」の中で機能してきたのである。
キーワード:企業内教育、労務音理、仕耳競争モデル、内部労働市場、日本的経営

  • 1. 企業内教育における「業務遂行能力」の問題
  • 2. 企業内教育の歴史と「自己啓発」概念
    • 2-1. 企業内教育の構造変化の時期
    • 2-2. 「自己啓発」概念の仮定
    • 2-3. 経営者と銀行における「自己啓発
  • 3. 経済変動と労働力需給の変化の時代に
  • 4. 労務管理の模索と「自己啓発」概念の成立
    • 4-1. 「ミドル・マネジメントの役割
    • 4-2. 雑誌「経営者」における教育訓練記事の変化
  • 5. システムの中の教育〜今後の課題