ヴリクト『説明と理解』

再訪。読み返してみるといろいろと親切な本である。

※ご参考:哲劇メモ http://d.hatena.ne.jp/clinamen/20050621/p2

説明と理解 (1984年)

説明と理解 (1984年)

isbn:4782800185

  1. 二つの伝統
  2. 因果性と因果的説明
  3. 志向性と目的論的説明
  4. 歴史学と社会科学の説明

1で〈実証主義/解釈学〉という対立軸を設定し、2と3でそれぞれについて解説し、4で議論をまとめる。

ウィトゲンシュタインの弟子である著者自身は、「解釈学とウィトゲンシュタインは共通の課題に取り組んでいた」という見立てのうえで、自らを「解釈学」側に位置づけている。

本書では〈説明/記述〉〈因果性/志向性〉〈法則定立/個性記述〉などの対照的カテゴリーが取り出され・解説されているが、こうした対立そのものは、今日の議論水準からいえば あまり興味をひくものとはいえない*。むしろ──本書では積極的な主題となってはいないが──、「合理性」のような一つの同じ概念を巡る(明示的になってはいない)対立をクリアにすることのほうが、今日では重要かもしれない。

* それでも「原因-結果」という概念に関しては、ヒュームが分水嶺になっている、という指摘などは面白かった。