ふたたび単著執筆の打診を非公式に受けたので、自分を著者に想定した場合の書籍企画を書いてみた。
これについて世界の皆さまのご意見を伺いたい。
基本的な方向性は、
- 私がはじめてルーマンの著作を手にとった大学2〜3年生時に存在していてほしかった解説書を、自分宛てに自分で書く
- ルーマンの著作群が持つ様々な側面の中でも、特に「建前や通念の反省的検討」という側面に照準する
というもの。
企画概要
- 作業タイトル:
『ルーマン解読──理系人のための建前と社会通念入門』- 想定理想読者:
社会学その他についての知識はほぼまったく持たないが、知らないことに触れることは厭わない地方国立大学理学部の二年生- 目標:
一般向けの概説書。
ルーマンの著作解説を通じて──特に、こうした議論に触れることが少なく前提知識もまったくないが、多少は知りたいと希望している理系人に──近現代社会の建前・お約束・通念との付き合い方を考える材料を提供する。- 作業の軸
- 軸0:ゼマンティクと社会システム
- 軸1:精神科学と行動科学
- 軸2:生活世界と技術
- 軸3:実存主義と技術論
- 具体的な作業:
- 著作全体の課題:
解説全体を使って「社会システム論と実存主義との異同」という一点を明らかにする。目次案
- 第1章 『制度としての基本権』──社会は人格を備えた自由な個人からなり、誰にでも人権がある
- 第2章 『目的概念とシステム合理性』──組織には目的がある。
- 第3章 『信頼』──社会は信頼で支えられている。
- 第4章 『法システムと法解釈学』──自分の持ち物は自由にできる。他人の持ち物に手を出してはいけない。
- 第5章 『権力』──社会は力関係で成り立っている。
- 終 章 {まとめ}──未来は現在の振る舞いによって変えられる。
各章末に、その章の話題に相応しい分野の識者とのちょっとした対談をつける。
原稿が書けたらまず識者のチェックを受けリライトしたうえで次の方向で対談をおこなう:
- 標準的な学説と比べてルーマンの見解がどう違うかを聞いてみる。
- 書いてるうちに生じた疑問を専門家にぶつけてみる。
我ながら素晴らしい企画であり、私は このような本が世界に存在したほうがよいと思う。
また「既に存在していてよさそうなのに目下存在していないものを存在させる」という私の人生の指針にも適っている。
しかしこの本の出版は世界にとってはよいが、私にとってどのようによいかというのが不明なのである。
一つだけ思いついた私がこの本を書くべき理由は「社会学科と無関係にルーマンを読んできた過去の自分の孤独の供養」だが、しかしそれをやらなくても私は今後も問題なく生きていける。
そして、それ以外には書くべき理由が見つけられなかった。
そして、それ以外には書くべき理由が見つけられなかった。
他方、執筆によって犠牲になるものは多い。
私自身の能力は限られているので、全体としてパフォーマンスも低下するだろう。
執筆期間中、本は読めなくなるだろうしこれはかなりのストレスになるだろう。
詳細は略すが他にも数多くのことができなくなるだろう。
世の中には、出さねばならぬ事情のある人がおり、その人たちは出せばよい。
しかしそうではない人たちにとって、本を作ることにはなんの意味があるのか。
本を刊行することで、著者にどんなよいことがあるのか。
これを世界の皆さんに教えていただきたい。
わたくしからは以上ですが、問いたいのは企画内容についてではないので、企画内容に関するコメントは不要です。
あと声援なども要りません。