The Five Books:E.H.カー(1961)『歴史とは何か』読書会

  • 主催:The Five Books
  • 講師:山野 弘樹

各講義の概要

第1回 (2024年1月22日 20:00-21:30)の内容:

まずは、『歴史とは何か』をより効果的に精読するための準備段階として、「歴史の哲学」という主題に含まれた数多くの哲学の難問に関して解説をしてまいりたいと思います。とりわけ、初回講義においては、「言語論的転回(linguistic turn)」および「歴史の物語論(narrative theory of history)」と呼ばれる議論に焦点を当てて解説を行います。
初回から重厚な哲学の議論が続きますが、「歴史の哲学」の根本問題を押さえることができるだけでなく、〈哲学的思考〉のトレーニングとしても極めて有効であると思われます。

第2回 (2024年1月29日 20:00-21:30)の内容:

第二回から、実際に『歴史とは何か』を読み進めてまいります。まずは第一章「歴史家とその事実」および第二章「社会と個人」の講義を行います。あらかじめ述べておきますと、E. H. カーは「過去の事実」=「歴史」という議論を展開しておりません。「歴史」とは、〈それとは別の何か〉なのです。それでは、果たして「歴史」とは一体何なのでしょうか? そして、なぜカーはそのような着想を抱くに至ったのでしょうか?
本講義においては、単にE. H. カーの議論の解説に留まるのではなく、カーの議論が立脚している前提を、現代哲学の見地から建設的に批判してまいりたいと思います。そのことで、本講義においてしか体得できない『歴史とは何か』の読書体験を得ることができると思われます。

第3回 (2024年2月5日 20:00-21:30)の内容:

第三回においては、『歴史とは何か』の第三章「歴史・科学・倫理」および第四章「歴史における因果連関」の講義を行います。第三章において問われているのは、「歴史学は科学の一部か?」という問いです。そして第四章において問われているのは、「因果関係と意志とはいかなる関係にあるのか?」という問いです。
本講義においては、『歴史とは何か』第三章・第四章をじっくりと精読するために必要な哲学的な枠組みの解説を丁寧に行ってまいりたいと思います。その中で、「科学的思考とは?」、「歴史を解釈するとは何をすることか?」などの根本的な問題にも私たちは取り組むことになるでしょう。

第4回 (2024年2月12日 20:00-21:30)の内容:

第四回においては、『歴史とは何か』の第五章「進歩としての歴史」および第六章「地平の広がり」の講義を行います。極めて大きな普遍性を有している第一章「歴史家とその事実」および第二章「社会と個人」とは異なり、第五章・第六章は、今日においては大きな「時代的制約」を受けてしまっている章であるように見えるかもしれません。E. H. カーの時代と私たちの時代の間には、大きな隔たりが存在しています。ですが、そのような議論の中においても、やはり21世紀において受け継がれるべき卓越した洞察がいくつも存在するのは事実です。ですので私たちは、いったい何をカーの議論から継承し、何をカーの議論において批判すべきなのか――そうした点を、丁寧に辿ってまいりたいと思います。それこそが、E. H. カーが望んだ「対話」を成就させる契機にも繋がるでしょう。
私たちは――今から約六十年前に行われたケンブリッジ大学の連続講演の受講者たちと同じように――E. H. カーとの「対話」の場に参席することになります。そしてそれは、紛れもなく、「古典」を介した思想家との〈終わりなき対話〉に他ならないのです。

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