基本的法概念の未開法研究への応用:ホーフェルド

ホーベル前掲著から引用:

ホーフェルドの基本前提は、あらゆる法律関係はとの間にあること、[‥]であった。[‥] 法律関係は、すべて双務的である。そしてホーフェルド図式で認められた四つの基本関係には、貨幣のようにそれぞれ両面がある。したがって、基本的概念は8つあって、それが以下のように四つの基本的交互関係に組み合わされる。[訳 p.52]

    人A   人B  
 積極的関係  I 要求権 demand right ←→ 義務 duty 裁判所その他法律上の有権機関の
強制的権威に従う命令的関係
II 特権的権利 privilege right ←→ 無要求権 no demand right
 消極的関係  III 権限 power ←→ 責務 liability それだけでは直接に法的手段により
執行される事がない
IV 免責 immunity ←→ 無権限 no power

040509 まちがってました:→修正版

うーむむむ。。。なぜたすきがけになっておるのだ...。


【受動的関係】:ある行為群に、受動的な(〔特権的権利←→無要求権〕と〔免除←→無権限〕という)性格を付与する宣言的決定を、法制度が行った、ということ。[訳 p.54]
例:「法律とは、Aが一片の土地をX、Y、Zに売却できる事だ」

  • →「Aは X、Y、Zに土地 甲を売却できることを法律が認めている」
    • →「Aが X、Y、Zに土地 甲を売却しても、それは法の関するところにあらず、と法律が宣告している」



では、法人類学にとっての この図式の利得は何か。

  • 未開社会では法と慣習が一つだという幻想が吹き飛ばされる [p.55]
  • 未開法の最難題──<私的/共産的>(<無体/有体>)といわれる諸制度の実際を描き出す問題──をクリアできる [p.56/61]
    • [財産:p.63]
      未開社会における以上諸例の分析は、所有権の性質に関するクックの定式と一致する。この定式はローマ法と英米法を素材とするものだが、右に分析されたデータによく合うように作られているとおもわれる。すなわち
      人が物を所有すると確言することは、その者がこの物にかかわる法的諸権利のきわめて複雑な集合体を持つこと、および間接的に、これら諸権利をその者に賦与するために必要な事実がすべて備わっていることを、一括して述べるものである。これを言いかえると、所有権の語は、そのような諸権利からなる一個の集合体を指示し、またこれら諸権利を発生させる諸事実の存在を意味するものである。所有権として指示される諸権利の集合体を分析すると、次のことが判明する。すなわり、所有権は、単に、不定数の厳密な意味に置ける権利、ないし相手方の義務に対応する不特定の人に対する請求権だけを内容とするのではなく、ホーフェルドの図式で使用された意味における特権・権限・免責の不定多数をも内に含む。このような請求権・特権・権限・免責の数は、人が生まれ、法的義務を負うにたりるほど成長し、そして死んでゆく過程で、たえず変化するとともに、何か事件が起こっても変わるものである。(Cook, 1933:521["Ownership and Posession," Encyclopaedia of the Social Sciences, XI:521-525])
    • [相続:p.65]
    • 有体財産と並んで無体財産が未開社会にあるかどうかという問題も、困難なく処理できる [p.66]



この項続く。