検討論点リスト3 - 複雑性、ミクロ・マクロ

複雑性:

  • 〔理性:1998〕
    • [p.48]→[p.51] 「全体社会の構造」(としての法の機能)
    • [p.91-] 〈一貫性/多様性〉の情報理論ジャーゴン(〈冗長性/多様性〉)による再記述。[Shapiro]

〈ミクロ/マクロ〉の対照:

→著者においては、[1] この↑対照が 「コミュニケーション/システム」の概念対に重なっており、それによって [2] 「システム」概念の採用が正当化されている、ように見える。
マクロ
  • 〔理性:1998〕
    • [p.50](参照:「ミクロマクロ」論文 ISBN:4787798200
    • →[p.52-3](「マクロ次元に存在する法規範/ミクロ次元によるその参照」、「裁判所による法の選択/全体社会へのその伝播」)
ミクロ
  • 〔法政関係:2002〕 [p.124] 「ミクロ的=相互行為的」
    • 「法的コミュニケーションも政治的コミュニケーションも、相互行為としてなされることなしには生起しない。」

〈ミクロ/マクロ〉と「複雑性」

〈ミクロ/マクロ〉と〈複雑性〉がセットで登場:

[p.95]
 法的議論理論に対するルーマンの批判が右に確認したようなものであるとすると、次のような問題が生じるであろう。
  • [1] ルーマンの批判は、ミクロ次元の法的実践における議論の過度の要求と、法システムのマクロ的形式的質たる「冗長性」・「多様性」や日常世界のマクロ的形式的質たる「複雑性」との聞に存する半ば経験的連関をてこにしていることは明らかだが、そのような半ば経験的連聞は現に存在するのか。
  • [2] 存在するとして、ルーマンの批判は法的議論理論が考慮せざるを得ないほど本質的問題を衝いていると言えるのか。
  • [3] 言えるとして、ルーマンの批判を受け入れることは法的議論理論にとって何を意味するのか。
この三つの問題のうち [1] の検討は明らかに本稿の守備範囲を超える。本稿で検討さるべきは [2] [3] である。本稿では [3] の問題をまず取り上げることにしたい。この問題は、ルーマンが法的議論理論に対して投げかける理性主義批判がどのようなタイプのものであるかに依存するが、これについては大きく理解が分かれ得るからである。[p.95]
[p.99] 再登場:
 ルーマンは、法的議論というミクロな現象のあり方と社会システムのマクロ的形式的態様の社会的相関関係に着目して次のように主張している。法的議論のあり方を検討する際に重要になるのは、
    • 「日常生活世界」のマクロ的形式的態様たる「複雑性」(行為の可能性の多様さ)
    • 「法システム」(の、正確には、法的諸議論が織りなす社会システムたる部分)のマクロ的形式的態様たる「冗長性」・「多様性」
である。
これらのマクロ的形式的態様の一定水準を確保・維は、二つの意味で、解決を要求する問題(ルーマンの用語では「準拠問題」)とするに足る。
  • [1] 日常生活世界の「複雑性」はそれ自体、確保・維持されるべきであり、「冗長性」と「多様性」を適切な水準で両立させることが、それに寄与する。
  • [2] 適切な水準の「複雑性」・「元長性」・「多様性」を確保・維持することは、充実した法的議論めの社会的可能性の条件である。しかるに、これらのマクロ的形式的態様が確保・維持されるについては、多にはあまり意識されていない、社会的諸条件が関与している。これらの諸条件に配慮を欠くと、意図せざる効果として、これらマクロ的形式的態様の水準低下を招来しかねない。
実践哲学的法的議論理論は、充実した議論の必要だけを強調しすぎると、却って、右のマクロ的形式的態様の水準低下を招来しかねない。しからば [1] [2] は真に解決を要求されるほど本質的な問題であるのか。[p.99]
ここでは「複雑性」が全体社会に、「多様性と冗長性」が法システムに、それぞれ割当られている。(あとで『社会の法〈2〉 (叢書・ウニベルシタス)』を確認すること。>俺)

「複雑性」の退場?

〔ざわめき:2007〕
II システム論的観察 - 2 準拠問題の移動
 かつてルーマン派システム論の重要な準拠問題は複雑性の縮減といわれたが、むしろ、近年のJレーマン派内部では、包摂/排除のパターンに関心が集まっている。[p.111]
でも再登場。〔ざわめき:2007〕
V おわりに
[...] 本稿は、社会的事象について詳細な記述を目指す点から波動イメージに依拠して論述を進めた。しかしそれは、自己言及や複雑性の概念を無用と見たからではない。社会システムの自己言及性や複雑性に着目することで社会的事象の捻りの効いた記述が可能になる。ただ詳細な描きこみがなければ捻り変じて空転に化しかねないと恐れたにすぎない。したがって、これらの観点の組み込みが今後の課題の一斑をなすことになる。[p.121]