涜書:竹岡&川北『社会史への途』

ルーマン社会構造とゼマンティク 1 (叢書・ウニベルシタス)』合評会の準備。
高橋『意味の歴史社会学―ルーマンの近代ゼマンティク論 (SEKAISHISO SEMINAR)』の注経由で。

社会史への途 (有斐閣選書)

社会史への途 (有斐閣選書)

第一部 社会史の形成

  • 第1章 フランス: 「アナール」学派と「新しい社会史」 (竹岡 敬温)
  • 第2章 イギリス: 「残余の要因」から「全体史」へ (川北 稔)
  • 第3章 ドイツ: 社会と国家のはざまで (早島 瑛)

第二部 社会史の領域

  • 第4章 政治文化: イメージと心性の政治文化史
  • 第5章 教育・民衆文化: 学校をみずからのものに
  • 第6章 犯罪・刑罰: フーコーと下からの社会史
  • 第7章 病気: 栄養不良の社会史──脚気とペラグラ
  • 第8章 日常生活: 方法としての日常生活──日常生活史・ミクロの歴史学・歴史人類学
  • 第9章 家族: 歴史の中に埋もれていた家族
  • 第10章 女性: 連続か、変化か──女性の社会史
初学者向けのかなりシンプルな概説。というかつまり教科書ですなこれは。 第3章を中心にぱらぱらと。 第二部も そのうち読む時間をつくりましょう。

師弟関係メモ

p.166
 50年代、シーダーはケルン大学のコロキウム(ドクトル試験研究会)で、コンツェはハイデルベルクの「社会史研究会」で、ローゼンベルクは短期間、客員教授をつとめたベルリン自由大学で、それぞれ多くの門下生を育てた。
  • シーダー門下からは マックス・ヴェーバー研究で著名なヴォルフガング・モムゼン、ハンス-ウルリヒ・ヴェーラー、ロータス・ガル(現在の『歴史学雑誌』の編集主幹)など、
  • コンツェ門下からは シーダー二世のヴォルフガング・シーダーが出た。
  • また、ベルリンの「ローゼンベルク・コネクション」からゲァハルト・A・リッターやフリードリヒ・ツンケルが出た。[...] 後にビーレフェルトでヴェーラーとコンビを組むことになるユルゲン・コッカは このゲァハルト・A・リッター門下である。
モムゼンやヴェーラーなどは 1930年前後に生まれ、最後のヒトラー・ユーゲントヒトラー青年団)の世代であった。彼らの原体験は、第三帝国ドイツ国家の消滅であり、これに大戦直後の社会的混乱と英米留学が加わる。彼らには国家消滅の体験に基づくコッカ中心視感への不信があり、反対に、伝統史学がこれまで拒絶してきた「西方志向」、つまりアングロサクソンの社会科学に開いた態度がある。しかし、「社会史の形成」に直接の関連をもつのが、彼らの徒弟時代に起こった「フィッシャー論争」であった。