検討論点リスト1 - 研究プログラム

方針(〜「研究プログラム」)の定式化

[2002] 版 [p.177-178] ([p.184]):
ルーマン派の理論プログラム - 4 プログラムの性格 - (一)プログラムの下位プログラムとその効果
 既に述べたように、オートポイエシス論もルーマンの社会システム論も、何かのシステムを描いているというより、具体的な観察のためのプログラムという性格が強かった。この点を考えると、ルーマン派にとって〈法的なるもの〉と〈政治的なるもの〉の相互浸透を解明するとは、相互浸透を起こしている接点ごとに、次のような効果が期待されるサブルーチンを繰り返し適用していくことになるだろう。
  • 1. 理論的観察の出発点は、再帰的作動を見出すことである。そうすることで、理論の側が対象にあらかじめ特定の内容を読み込んでしまうのを極力避けうる。
  • 2. 作動としては、コミュニケーションを選択する。そうすることで、〈社会的なるもの〉にはらまれる緊張から目をそずに観察をつづけることができる。社会的な過程を、「行為の連鎖」として描くならば、自他の振る舞いをそういうとして通用させた当事者の視点を特権化することになるだろう。
  • 3. 特定の事象を、複数のシステムの作動の複合的効果として観察する。その効果は、我々が経験している事象を、それ自体に緊張をはらみうる複数のコンテキスト(システム)の、必ずしも整合的とは限らない錯綜それ自体として、再発見することである。そうすることで、特定の事象が、通常の経験では見落とされているかもしれないような、できる限り多くの大域的・局所的関連の中において、考察できるようになることが期待される。
     冒頭で述べた、〈法的なるもの〉と〈政治的なるもの〉の相互浸透の例として取り上げたものの個性は、どのようなコンテキスト(システム)のどのような錯綜か、というところに見出されることになろう。そして、どの社会システムを関連あるものとして取り上げるべきかについては、対象とする事象ごとに異なる。一般には、システム・レフランスが多重的になればなるほど、分析は具体的になるはずである。
  • 4 システムの重なりを、構造的カップリングとして分析する。分析の焦点になるのは、おのおののシステムの、[1] 時間性、コミュニケーションのリズム、アナログ/デジタル構造、[2] 歴史的に形成されてきた構造、[3] シンクロしていく仕組み、[4] 以上のものの変異を含みながらの再生産のあり方、である。見出されるのは、世界の「貧しさ」と「ありがたさ」を同時に現出させる([1]〜[4] を焦点とする)媒介構造である。
  • 5 できれば関連する機能システムを取り上げる。その効果は、特定の事象を分析するに際して、もっとも大局的なコンテキスト(システム)を踏まえることを可能にすることである。というのも、この種のシステムは、全体社会──ルーマンの定義によれば可能なるすべてのコミュニケーションからなる──の機能システムだからである。
    • [2004] 版 [p.006-007] 「一 システム論のアプローチ - (二)分析手順」([2002] に同じ)
[2006] 版 [p.066-067]:
三-5 分析手順
  • 1 問題事象を構成するシステムを同定する。できれば関連する機能システムを取り上げる。機能システムを取り上げることの効果は、特定の事象を分析するに際して、もっとも大局的なコンテキスト(システム)を踏まえることを可能にすることである。もっとも大局的なコンテキストを踏まえなくてはならないのは、個々人の経験と体験を瑣末なこととして無視するためではない。むしろ、<同一>の社会に生きつつ各人の経験と体験には大きな<差異>が生じるという、多様性にどこまでも肉薄していくためである。
  • 2 システムの観察の出発点は、再帰的作動を見出すことである。そうすることで、理論の側が対象にあらかじめ特定の内容を読み込んでしまうのを極力避けうる。
  • 3 作動としては、コミュニケーションを選択する。そうすることで、<社会的なるもの>にはらまれる緊張から目をそらせずに観察をつつけることができる。社会的な過程を、「行為の連鎖」として描くならば、自他の振る舞いをそういう行為として通用させた当事者の視点を特権化することになるだろう。
  • 4 特定の事象を、複数のシステムの作動の複合的効果として観察する。その効果は、我々が経験している事象を、それ自体に緊張をはらみうる複数のコンテキスト(システム)の、必ずしも整合的とは限らない錯綜それ自体として、再発見することである87)。そうすることで、特定の事象が、通常の経験では見落とされているかもしれないような、できる限り多くの大域的・局所的関連の中において、考察できるようになることが期待される。
  • 5 複数システムの重なりを構造的カップリングとして、観察する。焦点になるのは、[1] システムの時間性、リズム、[2] 構造、[3] システム同士のシンクロの仕組み、[4] 以上のものの再生産のあり方である。
  • 6 評価の視点は、それらの複合の効果として、全体社会への人々の包摂/排除の態様が最適化されているかどうかである。
    • [2007]版 [p.110-] 「II システム論的観察」

ルーマン法・政治システム論の紹介

  • 福祉国家:1995〕「第一章 N・ルーマンにおける法・行政・市民」
  • 〔理性:1998〕 [p.48-]「一 法と日常世界──ルーマン解釈上の諸論点」
  • 〔法政関係:2002〕 「三 N.ルーマンの法システム論と政治システム論 - 2 法システム & 3 政治システム」
  • 生命倫理:2004〕 「六 政治と法」
  • 〔リスク社会:2006〕 「三 ルーマン派の一般的アプローチ─社会の音響学」「四 - 1 法システム & 2 政治システム」
  • 〔ざわめき:2007〕 「II システム論的考察」